台湾が「歴史の教科書を元に戻す」ということ

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 台湾に関心をお持ちの方々には、已に旧聞に属することかとは思いますが、あまりよくご存じでない方もいらっしゃると思いますので、やはり、ここにに概要を記します。

 5月20日に発足した民進党・蔡英文総統率いる新政府の潘文忠・教育部長(日本では文科相)は、早速翌21日に、馬前総統の下で改訂され、2015年8月1日から実施されていた中国色の強い高校の歴史(と国語)の学習指導要領をひとまず廃止する事を発表し、新指導要領に基づいて発行された教科書を元に戻すように、と指示されました。

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 新政府の初仕事は、教育を中国国民党(「国民党」の正式名)政権以前の台湾路線に戻すことでした。

 馬英九前総統の下で実施された指導要領の改訂(2014年1月)に基づいて、2015年8月(新学年度)から用いられていた高校歴史教科書の、主な改訂点は以下の通りでした。(しかし、馬前総統は、8年も総統の座にありながら、どうして政権も終わりに近く、有り体に言えば国民の支持率も低くなってから、この教育改革に手を付けたのでしょうか??)

・「鄭氏統治時代」を「明鄭統治時代」とし、中国(「明」とのつながりを強めようとした。
・「中国」を「中国大陸」と表記することにより、大陸の中国と島の台湾とは同じ一つの中国だ、という認識を持たせようとした。
・国共内戦に敗北し、中国から敗走してきた国民党政権による台湾「接収」を、日本の植民地からの祖国復帰を意味する「光復」に変更した。
・国民党の統治以前に台湾に住んでいた台湾人(本省人)の、特に知識人の多くが、殺戮された228事件に続く白色テロの記述を縮小した。(日本に「歴史を直視しろ」としつこく迫りながら、2千万人もの死者を出した文革を自国民には隠そうとする中国共産党のする事とそっくり!)
・日本統治時代の表現を「日本統治時期」から「日本植民統治時期」に改めた。
・旧日本軍「従軍慰安婦」に「強制されて慰安婦になった」と、日本(軍関係者)による強制性を強調した。

 ご覧のように、馬前政権下で改訂された教科書は、「台湾は大中国の一部である」とする、「中国史観」の教科書となっていました。それについては、野党や市民団体ばかりではなく、教科書を使用する高校生からの反対運動も起こりました。7月23日夜には高校生が教育部の建物に突入し、当時の呉思華教育部長の執務室にも侵入して、24日の明け方に高校生と記者33人が逮捕されました。

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 その後も高校生達による反対運動は続き、釈放された一人が自室で自殺するという痛ましい事件も起きましたが、私の見落としかも知れませんけど、改訂版の教科書で教える側の高校の先生方による組織的な反対運動はなかったと思います。

 座り込みなどの反対運動はなお続きましたが、昨年、2015年8月1日から、新指導要領に基づく改訂教科書の使用が実施されました。

 しかし、2016年1月の総統選挙と立法院議員選出の選挙に圧勝した民進党と、2014年に涌き起こった「ひまわり学生運動」から政党に成長し、5人の議員を立法院に送った「時代力量」は、新総統就任に先立つ4月の議会で、新学習指導要領の実施を、審議保留に追い込みました。

 そして、5月20日、蔡英文新総統が就任するやその翌日に、馬政権が決定した指導要領に基づく教科書の改訂版を、以前の版に戻す、とする上記の発表となった次第です。なお新教育部は今年の9月からの1学期だけは、已に教科書が刷り上がっていることもあろうので、改訂版を使うのも可とするけれど、2学期以降は、旧版を使うことが義務づけられる、という方針を述べています。

 李登輝総統時代に作られた「認識台湾」という教科書と、それに続く9年一貫教育の「社会学習」で教育された若者達が、自分たちを(中国人ではなく)台湾人である、と、強く思っている、ということが、高校生達の運動からも、1月の選挙結果からも、はっきりと解りました。緑が民進党、青が中国国民党、黒が「時代力量」の当選者数です。(チャコールグレイは「其の他」とあります。)  

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 中国は、なんだかんだと嫌がらせをするでしょうけど、台湾の皆さん、気合いを入れて、頑張ってくださいね!台湾が大好きな私達も応援しています。

 今回の紹介は、「産経新聞」「朝日新聞」のWeb版、「フォーカス台湾」「トモニュース」などによりましたが、もし私の記述に間違いがありましたら、お教えください。
 写真は「フォーカス台湾」と「トモニュース」の動画によりました。

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