スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

久々の「故宮博物院」

 台湾に来たばかりの頃は、時に「故宮博物院」に行っていましたが、中国からのお客が多くてゆっくり見学もできない、という話を聞いてからは、敬遠するようになってしまいました。

 けれども、かつて私が義守大学に勤務していた頃、日本語学科のアシスタントをしていた黃さんと久々に台北で会ったら、「日曜日に、故宮博物院をご案内しましょうか」、と言ってくださって、案内していただくことになりました。
 黃さんは、学生時代から「故宮博物院」が大好きで、ボランティアとして案内役をしていました。卒業後は九州大学で修士の学位を得て、念願の「故宮博物院」に就職が決まり、(今は)助理研究員として、educatorの仕事をなさっています。これからの活躍が楽しみな方です。

 その黃さんにご案内いただけるなら、願ってもないことです。是非ご案内いただくことにして、日曜日の「故宮博物院」に行きました。

20161010-1.jpg

 「故宮博物院」を全部一日で見て回るなど、無謀なことです。今回は、「芸術に見られる自然観」というテーマの特別展を見ることにしました。

20161010-2.jpg

 始めに展示されていたのが、清朝・乾隆帝の時代に完成した、壮大な「欽定天文正義」でした。

20161010-3.jpg

とても綿密で美しい天文図ですが、

20161010-4.jpg

余りにも細密すぎることと、私達が慣れ親しんでいるギリシャ生まれの天文からかけ離れていることとで、本当のところは、「北極星」以外はよく解りませんでした。

 『詩経』の最初の詩、「桃之夭々たる 灼々たる其の華 …」は、白川静先生のご講義「中国文学」が思い出されて、懐かしかったです。

20161010-5.jpg

 続く四季の花々を描いた美しい画の中では、夏から秋にかけての絵に、特に親しみ深い花を見出しました。百合とゼニアオイの隣に配されているのは、「露草(つゆくさ)」です。日本人に愛されていて、私も好きな雑草なのですが、
 
20161010-6.jpg

1985年から87年まで勤務した南京大学の構内にも咲いていました。学生に、「この花は中国語で何と言うのですか」と聞いたら、学生は、「老鼠草(ラオシューツァオ・ネズミ草)です」、と教えてくれました。
 ウワッ!これがまた、「付けも付けたり」というくらい、花の形がネズミの顔に似ているんですよね!それからしばらくは、「つゆくさ」を見ると、必ずネズミを連想してしまって、教えてもらったことを後悔しました。

 秋の花の中で、特別に親しみを持ったのは、「秋海棠(しゅうかいどう)」と、その向かって左、菊に挟まれて咲いている「金木犀(きんもくせい)」です。

20161010-7.jpg

 案内してくださった黃さんに、「日本でも、中国の杭州や南京でも、木犀(桂花)は、オレンジ色の花が多くて、『金木犀』って呼ばれているんですよ」と言ったら、「そうなんですか、金木犀は台湾では見たことがありません」と言いました。(ほーら、東山彰良さん、『流』の中には、台北に咲く金木犀の描写が複数出てきますが、台湾人が台湾で金木犀を見たことがない、と言っているんですから、やはりあなたの思い違いではないかと、私は思うんですよね…。)

 明の文徴明が書いた、「赤壁の賦」です。

20161010-8.jpg

 私は高校生の時、漢文の授業で、渡辺泉先生から教わりました。渡辺先生は「赤壁の賦」が大好きで、読み出したら止められません。チャイムが鳴っても、「もうちっと読ませてくれや」とおっしゃって、終に最後までお読みになりました。「赤壁の賦」を書いた書家は多く、あちこちの展覧会で見ますが、見る度に渡辺先生を思い出します。
 渡辺先生はまた、頭全体がツルツルに禿げていらして、ある日ワルイ学生が黒板に、「青年老いやすく 髪生えがたし 一本の頭髪 軽んずべからず」と書いて、先生をお待ちしていました。誰も消そうとしません。ご存じのように、「少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず」のパロディーです。渡辺先生は黒板を見ると、にやりと笑ってお消しになり、何事もなかったかのように、授業を始められました。
 渡辺先生は、無論もうお亡くなりになりましたが、私が死んだ後も、折に触れこんな風に私を思い出してくれる人がいるなら、それは私がその人の心の中に生きているということであり、私にとって大きな慰めです。

 閑話休題。「黄帝蝦蟇経」という、おかしな名前の医学書がありました。ツボと、人体と月の満ち欠けと気の流れの関係等について書いてあるらしいのですが、私には???でした。

20161010-9.jpg

 しかし、「黄帝内経」は、今も中医学の基礎となっている書物だそうです。

 陶磁器の所蔵品もたくさん展示されていました。その中で「好きな一作を」というなら、私にとってはこれです。

20161010-10.jpg

 北宋汝窯の青磁で、昨年「国立故宮博物院展」が日本で開催されたときにも、出品されていました。ほのかな青で、更にうっすらと紅色がほの見える、美しい色合いの青磁で、蓮の花の形も気品を湛えています。
 一年ぶりに、また鑑賞することができ、眼福を味わうことができたのは、本当に幸せな事でした。

 ところで、台湾の総統が、中国寄りの馬英九氏から、内に独立志向を秘めて中国とは距離を保ちたい、民進党の蔡英文氏に総統が交替したことが、中国の逆鱗に触れ、中国政府は、台湾への旅行者を減らす、という方法で台湾を経済的に締め上げようとしています。そのため、故宮博物院への、中国からの観光客も少なく、台湾や諸外国からの客は、静かな環境でゆっくりと落ち着いて鑑賞することができました。日本の皆さん、今が故宮を訪れるチャンスでございますよ!
 それにつけても、このように世界に誇る素晴らしい芸術品を残すのも中国人、その作品を鑑賞するマナーの悪さで、世界の人々から顰蹙されるのも中国人という落差の激しさに、腑に落ちないものを感じざるを得ません。

コメントの投稿

非公開コメント

アクセスカウンター
プロフィール

濱屋方子

Author:濱屋方子
FC2ブログへようこそ!

濱屋方子の書籍紹介
日本語における「挨拶」の諸相
   日本語における
  「挨拶」の諸相
副詞・摘み草
   副詞・摘み草
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。